英語解説
2021年4月16日
英単語 moralを意味・注意点・関連表現を徹底解説!日本語のモラルとは違います
近年「モラルが低い」とか「それはモラル違反だよ!」「会社にモラハラ上司がいるんだ。。。」など、モラルという言葉をよく聞くようになってきました。
しかし、この「モラル」というカタカナ言葉、いったいどんな意味があるのでしょうか?
日本語で使われる「モラル」は、「道徳」「倫理」「倫理観」「道徳意識」などを意味します。
モラルは英語でも “moral” ですが、日本語のモラルと英語のmoralは、果たしてまったく同じ意味を持っているのでしょうか?
日本で問われる「モラル」は、世界中どこに行っても通用する「モラル」なのでしょうか?
倫理・道徳というと「堅苦しそうだなぁ」と思うかもしれませんが、今日は “moral” を優しく紐解いていきましょう。
日本人と英語話者との文化的な背景も絡んでくる内容ですので、外資系企業で働いている、将来海外で働きたいという方は、読んでおいた方が良い記事です。
・moralの意味
・日本語的なモラルとmoralの違い
・moralに関係した重要表現
目次
“Moral” の意味
英語辞典では “moral” はどのように定義されているのでしょうか?
Oxford Learner’s Dictionaries によれば、”moral” とは“Personal quality (人格)” にかかわる事柄を表す形容詞として
1.[only before noun] connected with principles of right and wrong behaviour
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/moral_1?q=moral
和訳
名詞の前に置かれ、正しい/間違った行動の原則と結びつけて語られるもの
2.[only before noun] based on your own sense of what is right and fair, not on legal rights or duties
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/moral_1?q=moral
和訳
名詞の前に置かれ、法律や義務ではなく、自身の感覚に基づき何が正しく公正であるか。
同義語は、”ethical”(倫理的)
3.following the standards of behaviour considered acceptable and right by most people
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/moral_1?q=moral
和訳
ほとんどの人から受け入れられ、正しいと考えられている行動基準に従うこと
同義語は、”good” (良い)、“honourable”(名誉な)
4.[only before noun] able to understand the difference between right and wrong
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/moral_1?q=moral
和訳
名詞の前に置かれ、正しいか間違っているかを理解できること
と定義されています。
「道徳的」とか「倫理的」って具体的にどんなことを言うの?
日本語で道徳的とか倫理的、と言うと
「ゴミをきちんと分別しましょう」
とか
「人に迷惑をかけないようにしましょう」
など、具体的なことは色々出てきます。
一言で言えば、公序良俗に反しないこと、他人や社会の安定に対して自分が何をするべきか、言い換えればいかに良いマナーを示すか、に重点が置かれているように感じられます。
では、英語で “moral = 道徳的・倫理的“ と言った場合どんなことを指すのでしょうか?
Your Dictionaryオンラインでは
- Morals are formed out of a person’s values.
モラルは個人の価値観を基に形成される
と定義しています。
これを前提とすると、人種・国籍に関係なく当てはまる “moral” には、次の要素が必要になると考えられます。
- Courage(勇気)
willingness to do difficult things.
難しい物事に立ち向かおうとする心意気
- Compassion(慈悲)
: understanding the suffering of others or self and wanting to do something about it.
自身や他人の 苦しみを理解し、それに対して何かをしたいと思うこと
- Cooperation(協力)
: helping your family and friends, returning favours.
家族や友達を手助けし、 好意を返すこと
- Equality(平等)
: believing everyone deserves equal rights and to be treated with respect.
人は皆平等である権利を持ち、尊敬をもって接すると信じること
- Acceptance(許容)
: welcoming others whose ideas and practices differ from your own.
自分と考えや行動が異なる人も受け入れること
その他にも以下にmoralの重要な要素を書き出してみます。
- Gratitude:感謝
- Fairness:公平
- Generosity:気前の良さ
- Honesty:正直
- Integrity:誠実
- Kindness:親切であること
- Perseverance:根気があること
- Politeness:丁寧さ
- Respect:相手・物事への尊敬の心
- Responsibility:責任感
- Self-control:セルフコントロール
- Tolerance:寛容さ
- Trustworthy:頼もしさ
どうでしょうか? あなたが普段「モラル」を語る場合と同じ意味が含まれていましたか?
もしも外資系企業にお勤めの方は、この辺りの単語はもちろん考え方を理解しておくと、周りや上司から後押ししてもらえるような存在になるでしょう。
“moral” って “manner” や “rule” とは違うの?
では、”manner(礼儀)” や “rule(規則)” は “moral” と同じものなのでしょうか?
ちょっと頭を悩ませてしまいますが、シカゴ大学プレスが発行したジャーナルの中に、G.A Johnston教授の “Morals and Manners” という文章にヒントががあります。
その中で氏は二つの言葉の違いを以下のように定義しています。
Morals, he believes, are of the heart, manners are only skin-deep. Morality is the expression of a man’s inmost character… Morals are natural, manners artificial.
https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/intejethi.26.2.2376619
- 和訳
モラルは心の奥深くにあるが、マナーは表面的なものに過ぎない。
道徳性とは人間の最も重要な性格を表現するものだ。
モラルは自然なもので、マナーは人工的なものだ。
つまり、人前でのマナーが良いからと言って、内面のモラルが高いとは必ずしも言えない、と言うことですね。
“Rule” とは、”regulation(規則)、law(法律)、guideline(ガイドライン)“ などで、通常それを破るとマイナスの結果をもたらすもの、と言えるでしょう。
例えばサッカーでオフサイドの反則があればボールが相手側のものになったり、駐車違反をすると車がレッカー車で運ばれたりするなど。
しかしモラルに反する行動をとっても、批判・非難は受けるでしょうが、正式に処罰を受けることはないでしょう。
もっとも、駐車違反で罰金刑を受ける方が、ご近所の批判の目にさらされるよりも心理的痛手は浅いかもしれませんが。。。。
モラルが低い、って英語でもいうのかな?
社会的な規範への意識や道徳心が希薄で、自分さえよければいいと考える人を「モラルが低い人」と言います。
Google翻訳で「モラルが低い」と入力すると “low moral” と英語変換されますが、果たしてこれをそのまま使ってネイティブに通じるのでしょうか?
少し横道にそれますが、Googleなどの機械翻訳に頼りすぎることは、仕事で英語が必要な人にはあまりお勧めしません。
「機械翻訳が進歩しているので今更英語を勉強しても仕方がない」
「将来は、どこの国の人とでもスマホの機械翻訳のアプリを使ってスムーズなコミュニケーションを図れるようになるから、英語の勉強は時間の無駄だ」
という声も聞きますが、今の段階では機械翻訳は100%でないことは覚えておいてください。
話を元に戻して、「モラルが低い」ですが、日本で使われる場合と同じようなニュアンスで「モラルが低い」と言いたい場合には、
- poor morals
- low moral standards
- person with low morals
などを使う方が理解されやすいでしょう
日本語の直訳的に”モラルが低い= low moral” の図式ではネイティブは首をかしげてしまいますね。
ちなみに、スペルが近いmorale (やる気)を使って、“low morale(やる気が下がっている)”とすると、シチュエーションによっては、使用可能です。
例文
- Low employee morale is a silent killer of workplace productivity and performance.
従業員のやる気のなさは、職場の生産性とパフォーマンスを知らないうちに蝕んでいくサイレントキラーです
何らかの理由で従業員のモチベーションが下がり、遅刻や病欠が増えたり、ちょっとしたミスが増えたりする状態を示します。
“Moral” を含むよく使われる言い回し
- Moral harassment
日本でも「モラハラ」としてよく使われる言葉です。
“psychological harassment”(心理的嫌がらせ)若しくは “mobbing” とも言われます。 - Moral support
日本語訳では「心の支え」となります。
例)
My sister came along to the hospital just to give me some moral support.
私が心細くないように、妹が病院まで一緒に来てくれたの。 - The moral of the story is
「このお話の教訓は」と言う意味で、小さな子供に童話やお話を読んであげた後で、“The moral of the story is to love thy neighbour“(このお話の教訓は「汝の隣人を愛せよ」っていうことだよ)などと使われます。 - Morality
Moralから派生した言葉で、同様に『道徳性』『道義感』を表します。
Public morality(風紀)social morality(社会道徳)”などと使われ、日本語で使われる『モラル』は『モラリティ』の方がしっくりくるのではないか、と個人的には思います。
まとめ
今日はmoralという単語についてまとめてみました。
日本で使われる「モラル」は、本来は「ものの善悪をわきまえて正しく振る舞おうとする気持ちのこと」を意味するはずですが、実際は「人に嫌われないように、大多数を占める他者との輪を乱すような言動は慎むべきだ」と判断基準の軸が自分から他者に移ってしまっているようにも感じられます。
いざまとめてみると、日本人と英語話者との背景の違いなども合わさって、使いこなすとなると難易度が高い単語ということを、改めて実感しました。
でもグローバルな世の中では、理解しておきたい単語でもあります。
この記事が皆さんの参考になれば、嬉しいです。
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