英語解説
2021年7月2日
英単語Cancel Cultureとは?なぜ辞書に追加されたのか?その背景に迫ります
(この記事は2023年6月14日に更新しました)
皆さんこんにちは!
ステューディアス英語学院 代表のHankです。
今日は”Cancel Culture = キャンセルカルチャー” を取り上げます。
この”Cancel Culture”という単語は、Reader’s Digest が選んだ『2021年英語辞書に加えられた新語19選』の中の一つでもあります。
グーグルサーチで、”cancel culture” と入力すると、なんと25億以上のヒットがあります。
辞書の新語に付け加えられるのも当然、だと納得できますね。
では、言葉の意味、どうしてこの言葉が注目を集めているのか、などを探っていきたいと思います。
目次
Cancel Culture とは
”Cancel = キャンセル” も “culture = カルチャー・文化” も、それぞれ日本でも良く知られたカタカナ語です。
では、この二つの言葉が合わさった “cancel culture” とは、どんな意味を持つのでしょうか?
初めてこの言葉を聞いた時には、
「コロナで色々なイベントが直前にキャンセルになったりしているから、これをキャンセルカルチャーと言うようになったのかな?」
とか
「お店がコロナで営業自粛してるからネットで物を買った人たちが、実際に商品が届いたら思っていたものと違って返品することが多くなったから、これをキャンセルカルチャーって呼ぶようになったのかな?」
などと考えていました。
しかし、調べてみると実はもっと深刻な意味を持つものだと言うことが分かりました。
Merriam-Webster英語辞典では、”cancel culture” を 以下のように定義しています
the practice or tendency of engaging in mass cancelling as a way of expressing disapproval and exerting social pressure.
https://www.merriam-webster.com/dictionary/cancel%20culture
和訳
不承認を表明し社会的圧力をかける方法として、大量キャンセルを行う行為またはその傾向
「文化的配慮を怠った」「環境に優しくない」「差別だ」などの理由から、SNS上で頻繁に巻き起こっている企業や個人に対する糾弾、そして不買運動などがその例です。
その行為を通して、企業または個人から謝罪を引き出したり、方針変更を促すことを目的としています。
Wikipediaにも “cancel culture” というページができています。
これによると、
Cancel culture or call-out culture is a modern form of ostracism in which someone is thrust out of social or professional circles – whether it be online, on social media, or in person.
https://en.wikipedia.org/wiki/Cancel_culture
和訳
キャンセルカルチャーはコールアウトカルチャーとも呼ばれ、オンラインやソーシャルメディア・対面で、誰かが社会的または専門的なサークルから追い出される事を表す
「現代の村八分のようなもの」 だと理解できそうです。
この村八分にあった人を指して『キャンセルされた』、と呼びます。
組織に対しても個人に対しても起こりうることだと言うことが、上記2件の定義から推測できます。
The expression “cancel culture” has mostly negative connotations and is commonly used in debates on free speech and censorship.
https://en.wikipedia.org/wiki/Cancel_culture
和訳
キャンセルカルチャーという言葉は、ほぼ否定的な意味合いを持っており、表現の自由や検閲に関する議論で使われることが多い
と言われています。
例えば、あるセレブが何か(誰か)を批判・非難した時に、それを表現の自由だと受け入れるのか/不正義が行われたと言って糾弾するか、という議論があります。
若しくは誰かや何かのキャンセルを求めることが表現の自由として守られるべきか/一定の制限を設けるべきか、などと言う議論もあります。
この “cancel culture” を論じるWikipediaのページは多言語ですが、アジアの言語は中国語・タイ・インドネシア語の翻訳しかない、と言うのがいささか興味深いところです。
日本にはキャンセルカルチャーは存在しない、若しくは、まだそれほど一般的にはなっていないのでしょうか?
そもそも “cancel culture” っていつ頃始まったんだろう?
Merriam-Webster英語辞典は、“cancel culture” は2017年頃から盛んにみられるようになった、と述べています。
著名人やセレブの行動や発言をきっかけとして、彼・彼女・彼らを社会的に村八分状態にするという事が続き、これが “cancel culture” という言葉が広く使用されるようになったきっかけだと言われています。
最初に “cancel culture” という言葉を使ったのは、Old Dominion University 助教授 Myles McNutt だと言う説があります。
McNutt氏が2014年2月にテレビ番組のキャンセルに関してツイートしたものに、“cancel culture” という言葉が登場しました。
https://www.insider.com/cancel-culture-meaning-history-origin-phrase-used-negatively-2020-7
2017年にアメリカで、女子新体操のオリンピック・アスリートが女性への性的暴行被害に関して「女性は控えめな服装をする義務がある」と発言しました。
この発言が、女性が性的暴行被害にあうのは女性側にも責任があると言っているものだ、とする世論が巻き起こり、このアスリートがキャンセルされるに至っています。
それ以前にも、One Direction の楽曲『One Way Or Another』のなかで着用した日本の法被が適切ではなかったというクレームがついて『キャンセル』の対象となっています。
https://www.insider.com/cancel-culture-meaning-history-origin-phrase-used-negatively-2020-7
日本語のネットでは、特にそれが問題だと批判している記事などは見つけられなかったので想像ですが、海外で
「あんな風にハッピを着るのは正しくない!日本文化に失礼」
と言った批判のコメントが一人歩きした、もしくは
「わざわざハッピまで着て日本におもねる必要ない」
などという批判が出て、それが『キャンセル』にまで発展したのではないかと思います。
2年ほど前にオーストラリアでも、当時人気のあったミュージカル俳優に対し、同じ舞台に立っていたた女優が「舞台上でセクハラを受けた」という爆弾発言をTVのインタビューで行いました。
彼はその結果、表舞台から完全に『キャンセル』されてしまいます。
ところが今年、彼が起こした裁判で、この女優は嘘の証言をしたという判断が下されました。
セクハラの訴えを受けた俳優は2年ほど全く仕事がなく、自殺未遂を考えるほどだったとニュース番組で語っています。
これが “cancel culture” の恐ろしさです。
“Cancel Culture” は正義だって考え方もあるよね、でも。。。
インターネットが普及したおかげで、今まで表に出ることがなかった企業や著名人の闇の部分を誰でも探り出すことができるようになりました。
不適切な行いはSNSを通じて拡散され、不買運動などを通して制裁を加えることができようになりました。
だから、”cancel culture” は社会を変える正義だ、と言う議論ももちろんあります。
「発展途上国のスウェットショップで、子供たちまで安く使って商品を作っているファーストファッションの不買運動をするのは、企業に目を覚まさせる機会だ‼」
これもまた消費者の声を企業に届ける戦略の一つでしょう。
しかし、著名人の発言や企業発表の一部を切り取ったものを根拠として『キャンセル』する風潮があることには、懸念の声も多く寄せられています。
最初に問題提起をした人の意図が、SNSで拡散されていく間により過激な解釈へと発展してしまうことも良くあります。
“Cancel culture” はアメリカでもっとも顕著に表れている現象です。
”digital tent” というウェブサイトでは、アメリカ西海岸で有色人種と自分がかかわりを持つと、自分の属するコミュニティから『キャンセルされる』のではないかと、本気で心配する白人女性たちが紹介されています。
この記事では、性差別や人種差別と闘うためには、”cancel culture” は効果的な手段であると認めています。
Cancel culture demands social change and addresses the deep inequalities in keeping the oppressed oppressed
https://onourmoon.com/cancel-culture-the-good-the-bad-its-impact-on-social-change/
和訳
キャンセルカルチャーは、社会の変化を要求し、抑圧された人々をを抑圧し続ける深い不平等に対処している
しかし、特定の誰かや何かを『キャンセルする』と言うムーブメントに乗りかかる前に、自分自身で『検証し判断する』ことが大切だとも提案しています。
アメリカのオバマ元大統領も、オバマファンデーションのサミットにおいて、”cancel culture” という言葉の使用は避けたものの、若者の間に広がる過度な『キャンセル』の風潮に警鐘を鳴らしました。
和訳
これはアクティビズム=行動主義ではない。そしてこれが変化をもたらすこともない
自分のやっていることが石を投げつけることだったら、さほど前進することはできないだろう。これは簡単な道を選んでいる
さいごに
いかがですか?
”Cancel Culture” は、両刃の剣でこれを行使する時には個人個人がしっかりと検証し、判断することが大切だと言うことが分かりました。
この事からも、英語を頑張る皆さんは、日本以外のメディアもチェックする習慣をつけ、何事に対してもバイアスのかからない判断を下せるようにしたいですね。
今日は以上です!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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